- 永井荷風〔銀座〕より
銀座を通して見た日本文化と西洋文化の混交がもたらす「もの」に対する複雑な心境をつづった随筆。
自分はいつも人力車と牛鍋とを、明治時代が西洋から輸入して作ったものの中で一番成功したものと信じている。あえて時間の経過が今日の吾人をして人力車と牛鍋とに反感を抱かしめないのでは決してない。牛鍋の妙味は鍋という従来の古い形式の中に牛肉という新しき内容を納めさせる処にある。
(銀座)
1986/岩波文庫所収東京に関する随筆を中心にまとめられたのが「荷風随筆集」です。中に収められた「銀座」で伝統を置き去りにし、盲目的な西洋文化を批判的に論ずる荷風。ただ「牛鍋」はその例外として日本のものである「鍋」と西洋から伝わった「牛肉」を組み合わせた創造的な発明であると絶賛しています。荷風が絶賛したお墨付きの牛鍋を再現してみました、きっと文明開化の味がするでしょう、お楽しみに。
牛鍋レシピ(2人分)
材料
牛肉
(切り落としか切り落とし薄切り肉でよい)200g 玉ねぎ厚めのスライス中玉 2/1玉 カイワレ大根 少々 きざみ葱 少々 牛鍋割り下(作りやすい分量)
水 150cc みりん 7cc 酒 75cc 砂糖 45g 濃口醤油
(牛肉の料理なので出汁は使いません)75cc 玉子 2個 作り方
- 鍋に割り下の材料をいれひと煮立ち
- 牛肉は食べやす大きさにカットする
- 鍋に牛肉を入れ上に玉ねぎをちらし入れ炊く
- 肉の色が変わるぐらいに火を通す
- 玉子をといで割り入れて食す
- 北大路魯山人(琥珀揚げ)より
日常料理にもなり、よそゆきの料理にもなる。美食家で知られる北大路魯山人が自ら考案し、名前をつけたとという、珠玉のエッセイ。
つくり方としては、まず指の通らぬほどのかたさに水溶きした葛を衣にして、十分煮立った油でカラリとあげるのだ。
(琥珀揚げ)「魯山人味道」
だしはてんぷらのそれと同じように、比較的かためにつくった葛の汁に橙かレモンを入れ酸味をつける。
この葛だしの中にさかなをちょっとつけ、それを食器に形よく盛る。揚げものに、すりしょうがをすこし添えると、匂いもよく、風情もととのう。
見かけは中国料理に近いものだが、中国にはこの種のさかながないので行われていない。似たるものにこいを使ってやるのはあるが、こんな美味しい琥珀揚げはできない。
1995/中央文庫所収北大路魯山人、書、絵、料理、陶芸とあらゆる分野において自らの美意識を追求した芸術家、
その彼が生涯追い求めてきた美食に関する散文を集めたのがこの(魯山人味道)です。
魯山人のレシピに忠実に白身の魚をつかい再現してみました、なんだか魯山人と話ができるような気がします